行政書士宇野敏志事務所

遺留分に配慮した遺言の考え方|相続トラブルを防ぐための5つのポイント

遺留分に配慮した遺言の考え方|相続トラブルを防ぐための5つのポイント

カテゴリ:新着情報

遺言書を作成すると、ご自身の希望に沿って財産の承継先や割合を定めることができます。

しかし、遺言者が自由に財産の分け方を決められるからといって、相続人の権利をまったく考慮しなくてもよいとは限りません。

一定の相続人には、「遺留分」と呼ばれる法律上保障された最低限の取り分があります。

遺留分を大きく侵害する遺言を作成すると、相続開始後に遺留分侵害額請求が行われ、財産を受け取った方へ金銭の支払いが求められる可能性があります。

「特定の子に自宅を残したい」

「介護をしてくれた家族へ多く財産を渡したい」

「相続人ではない方にも財産を残したい」

という希望がある場合は、遺留分を確認したうえで遺言内容を考えることが大切です。

この記事では、遺留分の基本と、遺留分に配慮した遺言を作成するための5つのポイントを解説します。

札幌市西区琴似で遺言書の作成をお考えの方は、ご家族の安心につながる準備として参考にしてください。

遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の一定の相続人に、法律上保障されている最低限の取り分です。

遺言や生前贈与によって特定の方へ多くの財産を渡した結果、相続人が遺留分に相当する財産を受け取れなかった場合、その相続人は財産を受け取った方へ遺留分侵害額に相当する金銭を請求できることがあります。

これを「遺留分侵害額請求」といいます。

遺留分を侵害する内容の遺言書が、当然に無効になるわけではありません。遺言自体は有効でも、遺留分権利者から金銭を請求される可能性が残るという関係です。

裁判所も、遺留分を「被相続人の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分」と案内しています。

遺留分が認められる相続人

遺留分が認められる可能性があるのは、次の相続人です。

  • 配偶者
  • 子や孫などの直系卑属
  • 父母や祖父母などの直系尊属

子がすでに亡くなっており、その子に子どもがいる場合は、孫などが代襲相続人として遺留分を有することがあります。

一方、兄弟姉妹や、兄弟姉妹を代襲する甥・姪には遺留分がありません。

ただし、誰が実際に相続人になるかは家族構成によって異なります。まず戸籍を確認し、相続関係を正確に把握することが重要です。

遺留分の割合

相続人全体に認められる遺留分の割合は、原則として遺留分を算定するための財産の2分の1です。

ただし、相続人が父母や祖父母などの直系尊属だけの場合は、3分の1になります。

各相続人の遺留分は、この全体の割合に、その方の法定相続分を掛けて計算します。

配偶者と子2人が相続人の場合

相続人が配偶者と子2人である場合、法定相続分は次のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 子:それぞれ4分の1

遺留分全体は2分の1であるため、それぞれの個別的遺留分は次のようになります。

  • 配偶者:4分の1
  • 子:それぞれ8分の1

仮に遺留分を算定するための財産が4,000万円であれば、配偶者の遺留分は1,000万円、子2人の遺留分はそれぞれ500万円が一応の目安です。

ただし、実際の計算では債務や一定の生前贈与、各相続人が受けた特別受益なども関係します。単純に死亡時の預貯金や不動産だけを合計すればよいとは限りません。

法務省は、遺留分の基本的な計算方法を相続法改正に関する資料で案内しています。

遺留分に配慮した遺言を作成する5つのポイント

1.相続人と遺留分権利者を正確に確認する

最初に、誰が相続人となり、誰に遺留分があるのかを確認します。

遺言書を作成した時点では想定していなかった方が相続人になることもあります。

たとえば、次のような場合は相続関係が複雑になりやすいため、注意が必要です。

  • 再婚しており、前婚のお子さまがいる
  • 認知した子がいる
  • 養子縁組をしている
  • 子が先に亡くなっている
  • 子どもがおらず、父母や兄弟姉妹がいる
  • 相続人の中に相続放棄を検討している方がいる

現在の家族関係を前提にするだけでなく、戸籍を確認し、将来の家族構成の変化も考えながら検討しましょう。

結婚、離婚、出生や死亡などによって家族構成が変わったときは、遺言書の見直しが必要になる場合があります。

2.財産と債務の全体像を整理する

遺留分を検討するには、遺言者がどのような財産と債務を持っているかを把握する必要があります。

確認しておきたい主な項目は次のとおりです。

  • 預貯金
  • 土地や建物
  • 株式や投資信託
  • 自動車
  • 貴金属や骨董品
  • 事業用資産
  • 貸付金
  • 借入金や未払金
  • 過去に行った一定の生前贈与

不動産や非上場株式などは、評価方法によって金額が変わることがあります。

遺言書に「預貯金は長男、不動産は次男」と記載しても、それぞれの実際の価値が大きく異なれば、遺留分を侵害する可能性があります。

財産の種類だけでなく、おおよその評価額まで整理することが大切です。

3.遺留分を確保できる財産配分を検討する

相続人ごとの遺留分を確認したら、その金額を下回らないように財産を配分できるか検討します。

必ず法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。

特定の方へ多くの財産を残しつつ、ほかの遺留分権利者には預貯金などを渡し、最低限の取り分を確保する方法も考えられます。

たとえば、事業を承継する長男へ事業用不動産を残し、ほかの子には預貯金を残すなど、財産の種類と価額を組み合わせて調整します。

「誰にどの財産を渡したいか」だけではなく、財産を受け取る方同士のバランスまで確認しましょう。

4.遺留分侵害額を支払える資金を準備する

自宅や事業用不動産など、分けにくい財産を特定の方へ承継させたい場合、完全に遺留分を侵害しない財産配分が難しいこともあります。

現在の制度では、遺留分を侵害された方は、原則として侵害額に相当する金銭の支払いを請求します。

そのため、不動産を受け取った方に十分な預貯金がなければ、支払資金を準備するために不動産の売却や借入れが必要になる可能性があります。

遺言を作成するときは、次のような点も確認しておきましょう。

  • 遺留分侵害額がどの程度になる可能性があるか
  • 財産を受け取る方に支払能力があるか
  • 遺産の中に支払いへ充てられる預貯金があるか
  • 不動産を売却せずに支払えるか
  • 生命保険なども含め、資金準備の方法を検討できるか

生命保険金の扱いは、契約内容や受取人、相続財産とのバランスなどによって異なります。安易に遺留分対策になると判断せず、専門家へ相談しましょう。

5.遺言の理由や家族への思いも伝える

特定の相続人へ多くの財産を残す場合、ほかの相続人が理由を理解できず、不公平感を持つことがあります。

遺言書には、法的な効力を持つ事項とは別に、家族への思いや財産配分の理由を「付言事項」として記載できます。

たとえば、

「長男に事業用不動産を承継させるのは、今後も事業を続けてもらうためです」

「介護をしてくれた長女へ感謝の気持ちとして多く残します」

「家族で争わず、互いに支え合ってほしいと願っています」

など、遺言者の考えを自分の言葉で伝えます。

付言事項には、相続人の遺留分を制限したり、遺留分侵害額請求を禁止したりする法的な効力はありません。

しかし、財産配分の理由を丁寧に説明することで、ご家族が遺言者の思いを理解するきっかけになる場合があります。

遺留分を侵害する遺言書は作成できるのか

遺留分を侵害する内容の遺言書も、直ちに無効になるわけではありません。

遺言者には、自分の財産を誰に承継させるか決める自由があるためです。

また、遺留分侵害額請求をするかどうかは、遺留分を侵害された方の判断に委ねられます。請求がなければ、遺言書の内容どおりに手続きが進むこともあります。

ただし、請求されることを前提にしない遺言は、財産を受け取った方へ予想外の金銭負担を生じさせ、家族間の争いにつながる可能性があります。

やむを得ず遺留分を侵害する内容とする場合は、想定される侵害額や支払方法、遺言執行者の指定なども含めて検討することが重要です。

生前贈与をすれば遺留分を避けられるのか

亡くなる前に財産を贈与すれば、必ず遺留分の対象から外れるわけではありません。

遺留分を算定するときは、相続開始時の財産だけでなく、一定の生前贈与も計算に含まれることがあります。

特に、相続人に対して婚姻、養子縁組や生計の資本として行った贈与は、特別受益として問題になる場合があります。

贈与の時期、相手、目的や、当事者が遺留分を侵害すると知っていたかなどによって扱いが異なるため、生前贈与だけで対策しようとせず、財産全体を確認しましょう。

遺留分侵害額請求には期限がある

遺留分侵害額請求権は、いつまでも行使できるわけではありません。

原則として、次のいずれかの期間が経過すると権利が消滅します。

  • 相続の開始と、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年
  • 相続開始の時から10年

遺留分を請求する場合は、期限内に相手方へ権利を行使する意思を伝える必要があります。

家庭裁判所へ調停を申し立てただけでは、相手方への意思表示にならないため注意が必要です。

詳しくは、裁判所の「遺留分侵害額の請求調停」で案内されています。

実際に遺留分をめぐる争いが生じている場合や、請求の期限が迫っている場合は、速やかに弁護士へ相談しましょう。

遺留分の放棄を求めればよいのか

相続開始前に遺留分を放棄するには、遺留分を有する方本人が家庭裁判所の許可を受ける必要があります。

遺言書に「遺留分を請求しないでほしい」と書いたり、本人同士で約束したりするだけで、相続開始前の遺留分を確実に放棄させることはできません。

また、遺言者が相続人へ一方的に放棄を迫ると、かえって家族関係を悪化させる可能性があります。

遺留分の放棄を検討する場合は、放棄する方の自由な意思や、代わりに受け取る財産の有無なども含め、慎重に進める必要があります。

遺留分に配慮した遺言を作成した方がよいケース

次のような場合は、遺留分を特に慎重に確認することをおすすめします。

  • 特定の相続人へ財産の大部分を残したい
  • 相続人以外の方へ財産を遺贈したい
  • 再婚しており、前婚のお子さまがいる
  • 内縁の配偶者へ財産を残したい
  • 不動産が財産の大部分を占めている
  • 事業用の財産を後継者へまとめて承継させたい
  • 介護をしてくれた家族へ多く残したい
  • 公益団体などへ寄付したい
  • 過去に特定の相続人へ多額の生前贈与をしている
  • 相続人同士の関係に不安がある

遺留分は、相続人や財産の構成によって計算結果が変わります。

一度作成した遺言書も、財産や家族関係が変わったときには見直しましょう。

札幌市西区琴似で遺言・遺留分のご相談なら行政書士宇野敏志事務所へ

遺言書を作成する際は、ご自身の希望だけでなく、相続人の遺留分にも配慮することが大切です。

相続人と財産を確認し、遺留分を一応の目安として試算したうえで、財産配分や支払資金を検討することで、相続開始後のトラブルを防ぎやすくなります。

札幌市西区琴似の行政書士宇野敏志事務所では、相続を中心に、遺言・終活・成年後見に関するご相談を承っております。

相続人調査、相続財産の整理、遺留分に配慮した遺言書の原案作成、公正証書遺言の作成に向けた準備などをサポートいたします。

遺留分の請求をめぐって当事者間に争いがある場合は弁護士、相続税や贈与税の判断が必要な場合は税理士など、状況に応じた専門家への相談が必要です。

「希望する財産の分け方で問題がないか確認したい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

初回相談は無料です。札幌市西区・琴似周辺の方はもちろん、北海道全域に対応しております。